江戸時代、の意味を考える。

今回の柳営会では

東京学芸大学教授

大石 学 先生

に特別講演を賜りました。

明治維新以降を、それまでの歴史と

断絶させた近代、と捉える事なく

戦国時代、中世を終わらせた

江戸時代からを 初期近代として

連続した視座で捉え直す、という

テーマにて、お話がすすめられました。

私も、これまで色々な本を読むなかで、

内戦を終わらせて、法で世の中をまとめ、平和を

もたらす事に成功した、「徳川時代」の価値

に注目していましたので、とても共感ができる内容でした。

また大石先生は、

「パクス・トクガワーナ」という表現を用いておられました。

これは、古代ローマ帝国における

パクス・ロマーナ 「ラテン語: Pax Romana (パークス・ローマーナ)」

からの引用であると、思われます。

「ローマの平和」を意味し、ローマ帝国の支配領域(地中海世界)内における

平和を指す用語になります。

なお、パクス(パークス)とはローマ神話に登場する平和と秩序の女神である、と

されています。

そして、諸説ありますが、

この「パクス・トクガワーナ」に、もっとも貢献したのが、

学校では、犬公方(いぬくぼう)と、

やや蔑まされた紹介をされている

第五代将軍、徳川 綱吉公であると、

私は考えています。

一冊、本を紹介致します。

犬将軍ー綱吉は名君か暴君か

M. ボダルト=ベイリー氏 (著)

非常に分厚い本ですが、元禄文化が花開く事になる

江戸の世の中を創り出したのは、綱吉公の功績が大きいとの

分析が、丁寧に書かれています。

また、先生のお話で興味深かったのが、

神君、家康公のご命日の日光東照宮への

御参拝 「日光社参」についての解説でした。

現在ほど、通信手段が確立していない、当時にあっても

現将軍様が、日光に社参される際には、全国諸藩に

戒厳令が敷かれ、静謐、火の用心、通行規制などが

とても厳格に遵守されていたとの事です。

それと同時に、罪人の恩赦も実施されていたとの

お話でした。

幕府の威光がすみずみまで、行き渡り、

また日々の暮らしを送る、庶民階級も、

社参の無事のために、謹んで社会秩序の維持に

つとめた。

これは、ある意味、秩序だった平和を維持しようと

する意識や、行動様式が、ひとりひとりに

備わっていた事の証拠とも言えます。

ひと昔前の時代劇などでは、幕府の圧政や、

悪代官に苦しめられる庶民という、

図式がよく見られていましたが、

今回のお話をきくにつけ

こうした日光へのお参りが、恙なく(つつがなく)

成功裏に実施されていたという事実は、

今で言う 国民ひとりひとりの働きに支えられた

間違いなく「平和」な、時代、

「パクス・トクガワーナ」

であったのだろうな、と私も腑に落ちた次第です。

学校の歴史教育では、教えてもらえない、

このような貴重な分析、多面的な物事の見方。

江戸時代における

「平和」

の意味を問い直し、

現在に生きる我々が、次世代に、なにを

どうやって伝えていくか。

柳営会会員として、真剣に考えていきたいな、と

思いました。

おつきあい、ありがとうございました!