時間栄養学から見た、”朝食抜きダイエット”の功罪

*健康寿命のため、朝食のもつ、大切な役割を見つめ直しましょう!

 

※メタボを気にして、朝食を抜いていませんか?

 

なにかと忙しい朝。。。

朝食を取る時間も惜しい、という方。

そもそも、朝食を摂る習慣がない方。

夜勤明けで、あまり食欲がない方。

各自いろいろご事情はあるかと思いますが、

「減量」、「ダイエット」を目的として、あえて

朝食を抜いている、という方は、特に今回の

「時間栄養学」

という概念について知っていただき、食生活行動様式を

見つめ直して頂きたい。

そのような思いで、記事を書く事にしました。

また、2009年度、テロメア(細胞分裂を決める体内時計、つまりは健康寿命を規定しうる!

染色体の先端にある構造体)の発見で、ノーベル医学・生理学賞を受賞された

エリザベス・ブラックバーン博士の

「細胞から若返る! テロメア・エフェクト」

の内容もご紹介しながら、

「健康寿命に効く、正しい食事のとり方」

についても、考察していきたと思います。


 

 

 

食事が、体内時計の調節に役立っているという発見

 

地球上に生きる、すべての生命は、宇宙空間の活動に様々な影響を受けて

進化し、現在に至ります。

そして、当然ながら、朝と夜というリズムを司っている太陽によって

我々の生体リズムは調整されており、

こうした規則正しい、約24時間周期の生命活動は

「サーカディアンリズム」

と呼ばれ、18世紀ごろより、研究者たちによって

生体内にも、昼夜のリズムを感知する

「体内時計」の存在が、想像されていました。

普段、あまり意識する事はないかも知れませんが、

自分たちも、地球という惑星で、太陽光が作り出す絶対的なリズム

の支配下に、生存を許されているという事実に立ち戻り、

生命活動(食事、運動、睡眠)も、それとうまく適合させる事が

健康寿命にとって大切である、

そういう俯瞰的な認識を持つ必要があるように思っています。

 

※地球の自転のリズムが、生命活動を司る。

 

 

そして、研究はすすみ、現在では

脳内に「親時計」

胃腸や肝臓などに、

「子時計」

という2つの体内時計があるという仮説が提唱されています。

ただし、まだまだ議論されているようで、正確な体内時計の所在に

ついては不明で研究が続いているようです。

では、そもそも、「体内時計」が存在すると過程して、

「なんのために?」

必要なのか。

「体内時計」の機能、目的を考える必要がありそうです。

これについては、

「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」が参考になりました。

これには、体内時計の役割について明確に記述されています。

それは、

人間の身体を、

地球の「一日24時間」に合わせるため、

とシンプルに結論付けられています。

この点からも、我々は地球という環境の制約に合わせて

「生かせてもらっている」、という謙虚な気持ちにさせれれますね。

そして、我々の生活リズムは残念ながら不規則な生活で、

「乱れて」

しまうわけです。

僅かなずれでも、何日も、何週間もずれていく事は当然望ましくないわけで、

パソコンでいうところの

「再起動」

つまりは、心身リセットが必要になってきます。

それを発動させる刺激として、

「光の刺激」

が知られています。

朝、日の光を浴びる事で、まずは先にあげた

脳内の「親時計」が、身体の隅々まで

「朝である!生命活動を開始せよ!!」

と司令を出します。

そして、これと同じぐらい大切な刺激として

「食事による刺激」

も存在しているとされています。こちらは、「子時計」になりますね。

従って、朝食であれば、

光の刺激と相乗効果で、全身の細胞たちが

「ああ、やっぱり朝なんだな、リセットして身体を整えよう」

という事になるのだと考えられます。

 

このような時間医学の知見から、今日、栄養学においても、

「なにを食べるか?」

に加えて

「どのようなタイミングで、いつ食べるのか?」

も食事療法において大切である可能性も指摘されつつあります。

これが、「時間栄養学」という知識体系になります。

 

 

「時計遺伝子」の力をもっと活かす!

「時計遺伝子」の力をもっと活かす!

  • 作者:大塚邦明
  • 出版社:小学館
  • 発売日: 2013年02月

 

 

朝の光が、体内時計の針を地球の自転の針に合わせる役目をしているように、

食事も体内時計の針を調整する役目を担っています。早稲田大学の柴田重信教授は、

この食の時間医学に挑戦し、「時間栄養学」という新しい学問分野を体系化しました。

※「時計遺伝子」の力をもっと活かす!より引用

 

 

※我々は、体内時計で地球のリズムを感知している。

 

 

また、この本においても、様々な実験の結果から

体内時計は、空腹である時間が長ければ、長いほど時計の針を調節する作用が強い、

という発見について述べています。

世の中には、目の網膜に異常があり生まれつき、光の刺激を受け取れない方も

いらっしゃいます。そうした方にとっては、食事、特に朝食こそが

24時間の生体リズムを作り出し、光を感じられずとも、

夜になれば、「眠たくなる」というリズムを刻むために、

とても大切である、と言えそうですね。

 

 



 

 

 


夜勤などで、どうしても夕・朝の食事が不規則な場合には?

 

ここまでの話で、人間の身体は我々の生活スタイルとは

関わりなく、地球のリズムに合わせようするよう

「制御」されている事がおわかりいただけたかと思われます。

そして、仕事に忙しい場合には、食事や睡眠のリズムが乱れてくるわけですが、

健康に良くないだろうな。。。

という事には、うすうすお気づきかではないでしょうか。

それでも、一日の食事量、摂取カロリーを制限すればよいのでは?

という反論があるかも知れません。

具体的には、朝や昼をあまり食べすに、

夜にドカン!と食べるような食生活のスタイルなどです。

しかし、これは逆に肥満になりやすい、という研究報告があります。

Original Article

Free Access

High Caloric intake at breakfast vs. dinner differentially influences weight loss of overweight and obese women

First published: 20 March 2013

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/oby.20460

※原著論文へリンクします。

この研究は、

93名の平均年齢46歳、平均BMI 32.4!!(肥満の指標、理想は18.4-24.9)

の肥満女性を対象に、

朝食 700kcal- 昼食500kcal-夕食200kcal の朝食に高めのカロリー摂取グループ

朝食 200kcal- 昼食500kcal-夕食700kcalの夕食に高めのカロリー摂取グループ

分けて、12週間(3ヶ月)の体重変化を検討したというものになります。

合計カロリーが一緒に設定してある事が、ポイントと言えますね。

結果はなんと、

朝食に高めのカロリー摂取グループでは、参加者は平均で33.6%の

体重減少が確認され、

夕食に高めのカロリー摂取グループでは、参加者は驚く事に、平均で14.6%も

体重が増加したとの

結果が得られたそうです。

なお、こちらでは、体内時計に関する考察ではなく、

生体内の代謝(栄養の分解と吸収のメカニズム)に焦点を

あてて解釈していますが、

おそらく、これら代謝そのものを制御している、

「体内時計の働き」と無関係ではなさそうですよね。

夕方から、朝にかけて、長い時間「睡眠による絶食」という環境を経て

朝の光を浴びて、食事を摂る。

これこそが、地球の摂理に従った、

「時間栄養学」

の教えではないでしょうか?

私はそのように考えます。

そして、どうしても仕事で夕食が遅くなりがちな場合はどうするか?

もう一冊参考になる本を紹介致します。

 

食べる時間を変えれば健康になる

食べる時間を変えれば健康になる

  • 作者:古谷 彰子
  • 出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2017年07月13日

 

こちらでは、夕食が遅くなりがちな方には19時、と23時に分けて少しづつ食べる、

「分食」を推奨しています。

そして、同時に朝をなるべく食べるようにする、という事も必要でしょうね。

就寝前の高カロリーを、避けてできれば睡眠という

「絶食時間」をしっかり設けて、朝も食べる。

ご参考になれば、幸いです。

 

※夜勤があっても、食事で体内時計を調整しましょう。

 

 

 


健康長寿を司る、テロメアの効果を高める食生活を!!

 

本書を参考に、

「テロメア」について、もう一度説明をしておきます。

 

細胞から若返る!テロメア・エフェクト

細胞から若返る!テロメア・エフェクト

  • 作者:エリザベス・ブラックバーン/エリッサ・エペル
  • 出版社:NHK出版
  • 発売日: 2017年02月21日

最初にお伝えした通り、

著者、エリザベス・ブラックバーン博士は、テロメアに関する発見で、

ノーベル医学・生理学賞を受賞されていらっしゃいます。

生命のメカニズム解明に、大きな足跡を残された博士の本の序文を

見てみる事にしましょう。

 

この本には、人間の「老い」についての 新しい考え方が提示されている。

科学の世界で現在主流の考え方によれば、人間の老化とは、

細胞のDNAが徐々に損傷を受けた結果、細胞が不可逆的に老化し、機能を損なう事で起きる。

だが、損傷を受けるのは、どのDNAなのだろう?なぜ、損傷を受けるのだろう?

十分な答えはまだ出ていないが、複数の手がかりから、

元凶のひとつがテロメアである事が強く示唆されている。

※細胞から若返る!テロメア・エフェクト
健康寿命のための最強プログラム より引用

 

テロメアは、染色体の先端にある構造体で、これの長い、短いが、

寿命と極めて密接に関わっているという、大発見がなされたようです。

カドミウム、鉛などの重金属から農薬、プラスチック性の飲用ボトルなどが

テロメアを障害する有害物質とされています。

一方で、有機野菜を始めとした地中海食を摂る(以下、食べるアブラの記事に詳述)や

ストレスをうまく、笑顔で心穏やかに過ごす事などが、

テロメアを守るライフ・スタイルである、と書かれていました。

またこちらでも、体内時計に合わせる生活は、細胞がいつ自身を修復するのか

知るうえで、とても大切と述べられていました。

 

どうやら、テロメアは、一生不変で、運命として受け入れる存在ではなく、

食事、生活、マインドセットで改善できる!

このメッセージこそが、とても勇気つけられますね。

 

※心の在り方こそが、テロメアに効く!!

 

 

加えて、こちらでは

「テロメアの心得」として

賢明な食事のあり方についても、かなり詳しく書かれています。

是非、みなさんご自身で、腰を据えてお読み頂きたいところですが、

ひとまず、大切な項目を抜粋して、解説を加えてみます。

#炎症(歯周病などが原因で、免疫細胞から炎症関連物質が分泌され細胞を障害する)、

#インスリン抵抗性(肥満がひとつの原因とされています、膵臓から分泌され

血糖値をさげる働きのあるインスリンの効果が得られにくい病態を指す医学用語)

酸化ストレス(体内の酸化が原因でおきる細胞の障害)、

詳しくは以下のサイトを参照下さい。

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/sanka-sutoresu.html

※長寿科学振興財団のサイトへリンクします。

 

この3つの要因が、健康寿命にとって有害である、としています。

そしてこれに対抗するために、朝食を含めて、

野菜、果物、豆、植物、タンパク質、オメガ3脂肪酸を含む魚、

亜麻仁油やオリーブオイルを中心とした

「地中海式食生活」

が望ましいとしています。

こちらに、ついては以下の記事もご参照下さい。

体にいい!食べるアブラ 

 

そして、もうひとつ面白い提案として、

なにをいつ食べるか?に加えて、どういう環境や心構えで

食べるか?についても、とても貴重な助言がなされている点にも注目です。

これは表としてあげられています。

テロメアが短くなる行動パターンとして

朝食に、ソーセージとベーグル(アメリカの食卓のイメージですね)

昼食に、ファーストフードや加工食品、早食い

夕食に、加工された食品を食べる、テレビを見る

という例があげられています。

一方で

テロメアが長くなるなる行動パターンとして

朝食に、オートミールと果物。ヨーグルトやナッツ・バター入のフルーツやスムージー。
野菜のオムレツ。

昼食に、新鮮で精製度の低い材料でつくられた食事をとる

マインドフル・イーティングを実践する。

誰かとつながりあう。パートナーと一緒に食事や散歩をしたりする。支えあう関係にある人に

電話をしたり、メールを送ったりする。

夕食では、加工度の低いホールフードの食事をする。他者に意識をきちんと向ける。

※細胞から若返る!テロメア・エフェクト
健康寿命のための最強プログラム 表31より引用

ノーベル賞を受賞した博士が、

食事において、

誰かと一緒に楽しむ事や、

早食いや、テレビを見ながら、を控え、誰かに意識を向けながら摂る事の

重要性を伝えている点は、とても興味深く、真摯に受け止めるべきではないでしょうか?

我々日本人の生活に置き換えれば、

一日の始まりである朝には、野菜とよいアブラ(魚)を中心にとり、

昼は、職場などで、ワイワイ楽しみながら、なるべくオーガニック系の食事を心がけ、

夜は少なめに、そして家族と一日を振り返りながら静かに食事と向かい合う。

毎回、「いただきます」と声に出して、

食事に全意識を集中する、という行動になると思っています。

 

※家族で食卓を囲む事が、健康寿命に効く!

 

マインドフル・イーティング(Mindfull eating)は、食事におけるマインドフルネスを意味します。

今ここにある事を意識する、「マインドフルネス」については、

よろしければ本サイトの記事も是非ご覧下さい。

 

滝行でマインドフルネス??

 

まとめ

 

我々には、地球の周期に合わせて生きるために、

「生体時計」が備わっています。

この時計の機能を最大限に活かすために、

「朝食」

を摂ることは、「時間栄養学」的観点から、どうやらとても大切と言えそうです。

また、テロメアの心得としても、

食事を皆で楽しむ、食事としっかり向き合う。

これこそが、長生きの秘訣としており、是非とも実践していくとよいでしょう。

「いただきます」で、「ワクワクしながら朝食を!」

お付き合い頂き、ありがとうございました。