認知症やガン予防、ダイエットにも効く、嗅ぎトレとは?

今回は、

香りを作る専門家、調香師さんである

荘司 博之(しょうじ ひろゆき)氏による御著書、

「嗅ぎトレ」を紹介させて頂きながら、

普段当たり前すぎて、あまり深く考えないであろう、においを嗅ぐという事について

考察してみたいと思います。

 

 

 

 

本書の前書きには、

「嗅ぐ力」を使って、認知症や病気の予防にチャレンジしていこう!

と述べられています。

実は昨年、荘司さんという、バスクリンで「調香師」のお仕事をされているという、

なかなかに興味深い方がいらっしゃるという事を、

お仕事を通して知り合ったある方を通して、ご活躍を知る機会がありました。

私自身も、リラックスやリフレッシュ効果を目的に、診察室や自宅で簡易的な

アロマ・ディフューザーを日々愛用している事もあり、

医学的観点からも、きっと話が盛り上がるであろうと期待し、

面識を持たせて頂く段取りをすすめていたのですが、

残念ながらお互いの都合がつかず、

またの機会に、お預けとなっています。

ただ、本の感想はお伝えし、今もSNSなどで時々意見交換させてもらっていますので、

いつか、なにか画期的な健康寿命に効く、

「香り系のアイテム」や「サービス」の開発で、ご一緒できないものか

と、期待に胸膨らませている次第です。

さて前置きはこのぐらいにしまして。

本書の内容の中でも、特に医師として注目させて頂いた

以下の項目を中心に、

「嗅覚」が心身の健康にとって、もつ大切な意義、

「嗅覚」を鍛えるには、どうするとよいか?

について考えて行くことに致します。

 

「嗅ぐ」事に、集中する!

 

嗅ぐ力の低下は、健康寿命を脅かす可能性があるか?

 

本サイトのメイン・テーマでもある「健康寿命」について、

嗅覚の低下との関連をご指摘いただき、面白い勉強をさせて頂いたと感じています。

以下、やや長いですが本文の紹介です。

スウェーデンのストックホルム大学の教授(研究者の所属・職階等は原則研究当時のもの。以下同)らが、40歳から90歳までの1774人(平均63.5歳)の被験者に嗅覚テストをおこない、その後、その人たちを10年間追跡しました。追跡した10年間に411人(全体の23.2%)がなくなっています。テストで使用した13種類のにおいのうち、55歳を超えてくるとわかるにおいの平均が8つ以下になり、わかるにおいがひとつ減ると、死亡リスクが8%増加している事が分かりました。そして、嗅覚に障害があると死亡率が30%増加していたのです。嗅覚の低下と死亡リスクの関連性が、はっきり数値で表れています。

※本文より引用

非常に多くの観察対象を、前向き研究で解析した臨床研究論文であると思われます。

専門的には、嗅覚低下、それ自体が独立した危険因子であったのか

(年齢や性別の影響を受けずに)統計的に有意に、上記の結果であったのか、個人的には興味が

ありますが(原著にはきっと記載あると思われます)この研究者らの意見は、注目に値すると

考えます。

脳の一部に(事故などで)不可逆的な障害を受けた、あるいは、ガンなどで、脳の一部を

摘出する手術を受けた、などの特別な場合を除けば、研究対象となった方々の

「嗅ぐ力」に、その後の寿命をも左右するほどの違いがあった事に、

医師としては、とても驚かされました。

本研究で、嗅ぎ分ける力が衰えていた方々は、

普段から、嗅ぐ事をあまり意識していなかったためなのか?

また死因には、いろいろあるかも知れませんが、いわゆるアルツハイマー病などの、

認知力に障害を来した事が、主な原因なのか?

いわゆる五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)は、脳の働きとも

密接に関わっているため、嗅ぐ力の衰えは、すなわち脳の機能の低下の

原因でもあり結果でもあるでは?そのように考えながら、拝読した次第です。

そして、日々の「嗅ぎトレ」が、脳の機能の維持に、ひいては健康寿命の増進に

一定の役割を果たすのであれば、

積極的に取り組む必要があると言って、よいでしょう。

 

病院や、病室に漂う独特な匂い。。。こうした匂いをやわらげる取り組みに期待。

 

今回、著者でいらっしゃる荘司さんが、「病臭」の問題を取り上げて

下さった事に、現場医師としては、とても共感した次第です。

病気が直接的あるいは、間接的な原因となて体表や体内から発せられる不快なにおいを「病臭」といいます。病臭は、本人にとっても看護する側にとっても、大変つらい問題です。患者も、看病する人も、病気と闘う意欲・支えていこうという意欲を失ってしまう原因ともなりかねない、大きな課題です。

※本文より引用

これは、まさしくその通り!と言えます。

特に大部屋と区分される病室には、複数の患者さんが同室生活を送られています。

病状によっては、入浴が禁止されており、夏場など汗などの体臭がきつくなってしまう

状況が発生します。また、本書にも記述がありますが、ガンなどの末期、場合によっては

皮膚などから染み出てくる液体(浸出液)にも、独特の臭いがあります。

もちろん、換気や消臭剤的な取り組みは、なされていますが、

病院・病室という性格上、人工的な強い匂いで、これらをかき消そうという事は

困難でもあります。

スメル・ハラスメント

という言葉も認知されてきているぐらいですので、

患者さん自身にとってはもちろんの事、われわれ医療従事者も、快適な

「嗅環境」にて、心穏やかに仕事が出来ればと願っています。

こうした方面の研究が進む事を期待したいですし、自分もなにかアイディアを出せないか?

などと思ったりしています。

 

キンモクセイや、エクストラ・バージンオイルにダイエット効果?!
樹木や柑橘類に、リラックス効果!

 

本書では、キンモクセイや、エクストラ・バージンオイルを嗅ぐ事によって

食欲が抑えられる可能性があるとの研究結果が紹介されていました。

ご興味あるかたは、是非試してみてはいかがでしょうか?

また、これら以外にも、香りを「嗅ぎトレ」する事で、

うまく気分のスイッチを入れ替える切っ掛けにしてはどうか?という

御提案もあり、いろいろ試したい気分にさせられました。

 

不安な気持ちを和らげる効果のある

ラベンダー。

疲労回復に、

緑茶の香り。

集中力を高める、

ペパーミント。

記憶力を高める、

ローズマリー。

などなど。

みなさんも、この本を参考に、自分の心身を整える一助として、

「嗅ぎトレ」習慣、ワクワクしながらやってみましょう!

私も、本書を読んで以来、「嗅ぎトレ」な毎日を過ごしています。

 

朝起きて、ベランダに出て、まずは風の薫りを嗅ぐ。

歯磨き粉のにおい、を嗅ぐ。

朝食のにおい、を嗅ぐ。

食後のコーヒーのにおい、を嗅ぐ。

診察室で、集中モードに入るための、におい、を準備する。

病室では、病状の参考になる、におい、を意識する。

帰宅して、夕食のにおい、を嗅ぐ。

風呂で、入浴剤や、ゆずのにおい、を嗅ぐ。

寝る前に、アロマの香りを、嗅ぐ。

お読みいただき、ありがとうございました!!