「健康診断」の基準値をどう解釈するの?

「健康診断の基準値」の曖昧さに対する批判に向き合う

 

健康診断

について改めて考える。

今回は、

健診結果の解釈と、

その後の適正な行動、

をテーマに書きます。

 

健診結果の

基準値には個人差を

考慮に入れるべき。

 

基準値を超えていても

すぐには治療が

必要とは限らない。

 

基準値を超えている

病態に対して

すぐに薬を処方する

医師に問題がある。




これらは、特に

「メタボリックシンドローム」

※クリックで、厚生労働省のサイトへリンクします。

「高血圧」に関する

※クリックで、日本高血圧学会のサイトへリンクします。

議論の際に、

よく聞かれる批判と言えます。

 

 

メタボリックシンドローム、

通称「メタボ」のチェックのために

健康診断では、

身長、体重、腹囲が計測されます。

つまりは、肥満体型(メタボ)であると

高血圧や高血糖、脂質代謝の異常

(中性脂肪やコレステロール値の上昇)

になり、これらが心臓血管の疾病を

引き起こしたり、場合によっては

死亡のリスクとなる事が判明しているため、

そういう方への「注意喚起」のためですね。

 

mmaruさんによるイラストACからのイラスト  

 

 2010 Sep 28;56(14):1113-32. doi: 10.1016/j.jacc.2010.05.034.

The metabolic syndrome and cardiovascular risk a systematic review and meta-analysis.

 

その一方で、

やや「ぽっちゃり」の方が

長生きできる、

という反論も散見されます。

 

 2017 Nov;96(45):e8491. doi: 10.1097/MD.0000000000008491.

Association of metabolic syndrome and its components with all-cause and cardiovascular mortality in the elderly: A meta-analysis of prospective cohort studies.

 

こちらでは、

やや体重過多のお年寄りの方が、

「心臓血管死は少ない」との

研究結果を発表しています。

 

 2017 Apr;39(2):221-229. doi: 10.1007/s11357-017-9967-9. Epub 2017 Mar 9.

The association between frailty, the metabolic syndrome, and mortality over the lifespan.

 

更に、こちらの研究では、

全年齢を通して(検査対象となりうる)

フレイル(心身の虚弱)は、

※クリックで、健康長寿ネットのサイトへリンクします。

年齢、性別、人種などに関わらず、

それ自体が「メタボ以上に」

死亡リスクに関わる強い要因である

と報告しています。

 

確かに、

痩せていて、

心身虚弱な方は

長生きが難しい

というのは

納得の結果ですね。

 




これらは

一見、相反する

研究結果のようにも見えます。

 

このあたりが、

健診での

「メタボ」に対して

懐疑的な意見を生む

要因かと考えます。

 

 

しかし注意深く考えてみますと、

今の日本では、

「健康診断」が気になる

中高年の方の場合、

食事を摂らずに、

やせ細って、

心身虚弱である、

という方は少ないように

思われます。

どちらかと言えば、

働き盛りに加えて

不摂生や運動不足で

太り気味笑の方が多いように

感じています。

 

ウラテツdesignさんによるイラストACからのイラスト  

 

従いまして、

健康診断における

「メタボ」の解釈は、

その基準値のみに

振り回されず、

血圧や、その他の結果結果と合わせて

健康状態を判断したり

潜在的な病気の存在を

認知するきっかけになる

とご理解頂きたいと思います。

 

 



また高血圧については、

日本人間ドック学会が

あげる血圧の基準値と

※クリックで、健康長寿ネットのサイトへリンクします。

日本高血圧学会の、それとが

異なる事で、論争を生んだ経緯があります。

 

さんによるイラストACからのイラスト  

 

 

こちらも、

基準値の議論に惑わされず、

健康診断での

「高血圧」の報告が

気になる場合には、

自分の体調にも留意して、

一度医師の診察を

受けてみようか、

との行動を取るのが

適正であると言えます。

 

 

 

「高血圧」は

間違いなく命に関わる

危険な兆候です。

 

更に、

血圧は「いつ測定するか?」

によっても結果が

異なってきます。

以下の最新の研究では、

24時間連続の血圧測定あるいは、

夜間の血圧測定が、

心血管死亡のリスク予知に

有効であるとしています。

 

 2019 Aug 6;322(5):409-420. doi: 10.1001/jama.2019.9811.

Association of Office and Ambulatory Blood Pressure With Mortality and Cardiovascular Outcomes.

そして

もう一つ大切な事は

高血圧の原因として

手術などが必要となる

二次性高血圧症が潜んでいる

という事実です。

※クリックで、厚生労働省のサイトへリンクします。

 

そしてこれは、

医師による丁寧な診察と

そういう病気を疑って実施する

追加検査なくして

診断に至る事は極めて困難と言えます。

 

具体例として

睡眠時無呼吸症候群

で考えてみます。

※クリックで、厚生労働省のサイトへリンクします。

 



これは

夜間 就寝中に一旦呼吸が止まる

という現象が見られる病気です。

原因の詳述は やや専門的なので

控えますが、

結果として

寝ている間の ひどいいびき、

睡眠不足による

日中の強い眠気、

そして多くの場合

高血圧を伴います。

 

※居眠り運転の原因にもなり得る
睡眠時無呼吸症候群。

 

健診を受けない方でも

頭痛や体調不良で

医師の診察を受け

高血圧の薬を飲むよう

指導を受けている方のなかにも

正確な診断を受けずに

放置されている

睡眠時無呼吸症候群の方が

いるように思われます。

 

 

 

 

疲れているだけかな?

と様子をみている方で

実は二次性高血圧を

患っている場合、

健康診断は

病気に気付く機会を

与えてくれるはずです。

 

従いまして

「高血圧」の基準値は

曖昧なので

放置しておいても問題ない

という批判には

この二次性高血圧という

見逃せない病態への

視点が欠けている

言わざるを得ません。

 

しかし一方で

安易に「降圧剤」を処方する

という一部の医師の姿勢に

多いに問題がある事は

間違いありません。

 

 

 

特に

ご高齢の方への

ある種の降圧剤の処方は

腎臓の機能を損なう

リスクがあり、

専門医として

警鐘を鳴らす必要を感じています。

 

しのみさんによるイラストACからのイラスト  

 

一時期、

「腎機能保護」を

謳い文句に、

ある降圧剤が大々的な

プロモーションを行った事は

波紋を呼びました。

わたし自身も含め

処方の権限を持つ医師は、

今後もこうした仕掛けに

便乗しないよう

充分な内省が求められると

考えています。

 

 

 

 

 

加えて、

降圧剤と同様に

高血圧治療に用いられる

利尿剤と、頭痛や腰痛に対して

処方される鎮痛剤の組み合わせは

「急性腎不全」を発症させる

※クリックで、外部サイトへリンクします。

リスクが非常に高いため

細心の注意が必要なのですが。。。

 

 

残念な事に、一般の開業医さんから

病院に紹介される患者さんの中に

これが原因の「腎機能異常」

一定数見られます。

 




現在、

ネットでお手軽に

「痛み止め」が買えるため

そうとは知らずに、

こうした薬剤の相互作用で

重大な病気にかかる方も

増えてきているように

感じられます。

 

※非常に有意義なキャンペーンのご紹介。

「急性腎障害」(AKI)を防止するキャンペーンを開始 

NSAIDsなど3剤併用によってリスクが上昇 滋賀医科大学病院

※外部サイトへリンクします。

 

以上まとめますと。

 

メタボや高血圧は

基準値を参考にしながら

まずは自分自身の生活を

冷静に振り返る事が大切です。

そして 少しでも体調不良があれば

医師の診察を受けてみようかな

と行動に移して欲しいと思います。

 

仕事に忙しい

お父さん世代は

健康診断

以外の方法で

「自分は高血圧かも」

と認知するのは

難しいのでは

ないでしょうか?

 

そして健康診断の結果については

まずは必ず町の一般開業医さんを

受診するようにお願いします。

 

私としては、

その時に丁寧に話を聞いたり

身体の診察をせずに

すぐに降圧剤を処方する医者は

要注意だと思っています。

 

もし基準値を遥かに超える

高血圧に頭痛や疲れなども

伴っている場合、

全うな内科医であれば、

二次性高血圧の精密検査や

悪性高血圧を疑い、

※外部サイトへリンクします。

すぐに病院へ紹介してくれる

はずですから。

 

 




まとめ

 

基準値が曖昧である、

という理由だけで

健康診断を敬遠するのは

得策ではありません。

 

自身の体調不良が

思わぬ病気と関係している

可能性にも配慮して、

検査結果を眺めるように

して欲しいと思います。

 

また

医師から薬が処方される際には、

納得いくまで

よく質問するように

心かげて下さい。

 

お読み頂きありがとうございました!

健診シリーズ、次回は最終回、

③決して無意味ではない、

「健康診断」による疾病の「早期発見」

です。どうぞご期待下さい。

 

※参考記事 高血圧と食事については以下をどうぞ。

高血圧予防の、「減塩」について知ろう!

 


石川英昭(いしかわひであき)

管理者・石川 英昭


現役医師、医学博士。二児の父。徳川幕府・直参旗本石川家末裔。
ワクワクする毎日を送る事が、健康寿命に効く!との信念からマインドセット、食事、生活スタイルについて、分かりやすい情報発信を心がけています。

お問い合わせ