疲れているだけ?に潜む病気を見つける「健康診断」

ある人物のエピソードから、
健康診断の意義をお伝えします。

 

ときどき目にする、

「健康診断」への

批判的な意見について

現役医師の目線から

検証したい。

そんな思いで、

書いてきました

「健康診断」を

考えるこのシリーズ。

最終回は、

少し趣向を変えて

「物語形式」

でお伝えします。

 




③決して無意味ではない、

「健康診断」による疾病の「早期発見」

 

最近、

「危険運転」という

言葉が聞かれます。

 

そして、

これが原因で

「追突事故」を

起こしたり、

通学中の子ども達の

歩道に突っ込み

「死亡事故」に

つながるような

場合があります。

 

「危険運転」には

さまざまな原因が

あり得ますが、

この中に、

ある病気によって

前がよく見えなかった。。。

という要因がある事を

是非知っておいて

いただきたいと思います。

 



ここで、

ある中年の男性に

登場頂きます。

 

この方は

「長距離トラック」の

ドライバーをされており、

深夜でも、

長時間の運転を

強いられる

生活が続いていました。

 

なのなのなさんによるイラストACからのイラスト  

 

 

こうしたお仕事に

従事されていることもあり

食事も不規則になり、

お休みの日には

殆ど寝ているという

状態でした。

 

ご自身も

なんだか

体調がすぐれないな。。。

とは思いつつ、

病院に行ったり、

「健康診断」を

受ける時間を

取れずにいました。

 

ko-de-buさんによるイラストACからのイラスト  

 

 

実は、この時点ですでに

身体は

「ある病気」

冒されつつあり、

その症状が、

出始めていたのです。

 



 

彼は、

運転中、

特に「トンネル」から

出た際に、

「視界が真っ白でなにも見えない・・・」

※明順応・暗順応と呼ばれる
目の能力について解説するサイトへリンクします。

という状態に陥るのを

なんども

経験するようになります。

 

 

 

長距離の

ドライバーとしては

致命的な症状と

考えられます。

 

mono777さんによるイラストACからのイラスト  

 

もちろん、

この時点で

「眼科医」

の診察を受けていれば、

「ある病気」

の診断が確定していたはずです。

 

しかし、

仕事に忙しい彼は、

なかなか

そうした時間を

とる事が出来ませんでした。

 

そして数年の歳月が流れました。。。

 

体調は更に悪化し、

最近では、身体が

むくんでいるようにも

感じていました。

 

そしてついに、

片方の目が、

曇って見えなくなる

という症状を自覚し、

近所の「眼科医」

を受診する事を

決心しました。

 

診断は、

「眼底出血」で

原因としては

「糖尿病」の可能性を

指摘されました。

※クリックで外部サイトへリンクします。

 

その後、

内科へ紹介された彼は、

糖尿病による腎機能障害

それによる身体の浮腫という

診断結果を

告げられました。

 

しかも

腎臓病は末期状態の

慢性腎不全にて

遠くない将来

透析(とうせき)治療が必要になる

との宣告を受ける事に

なりました。。。

※クリックで外部サイトへリンクします。

 




もし

この方が

目の違和感に気付いた際に

眼科受診や

健康診断を受けずに

トラックの運転を

続けていたら?

あるいは、

高速道路で

追突事故を起こしていたかも

知れない。。。

歩道に

トラックで

突っ込んで

痛ましい

死亡事故!

を起こしていたかも知れない。

 

飲酒運転や

あおり運転は論外ですが。

交通事故の原因に、

ドライバーが

重大な病気を患っている

可能性も

無視はできないと

思われます。

 

たちくらさんによるイラストACからのイラスト  

 

 

※関連記事です。

「高齢者ドライバー運転事故」。。。我々はいつまで「運転の健康」を維持できるのか?

 

 

 

このように

潜在的な病気という切り口から

ある人にとっての

あり得たかも知れない

ひとつの未来予測をすることは

とても大切であると

わたしは思っています。

 

このエピソードに

登場する彼の場合、

眼底検査が含まれる

「健康診断」を受けていれば

糖尿病性網膜症(とうにょうびょうせいもうまくしょう)

※日本眼科学会のサイトへリンクします。

という目の病気を

「早期発見」

出来た可能性が高く

治療も受けられた事でしょう。

 

※関連記事です。

これが「老眼」? 現役医師が”目の健康長寿”について考えた

 

 

加えて血液検査での

血糖値の異常から

糖尿病に関する

正確な診断が

なされたと

思われます。

もちろんその先は

ご自身の食生活や生活習慣を

変えてゆくという

行動変容とともに

医師と相談して

適正な治療を受ける

という姿勢が必要にはなります。

 




健康診断を受けても

病院へ行く時間が作れない、

そういう方も

いらっしゃるかも知れません。

これは

必ずしも

個人の怠慢ではなく

生活のため仕事が休まない

といった要因もある事が

日々の診察で

痛感させられています。

 

残念ながら

健康を維持出来るか?

健康に配慮した社会生活を送れるか?

には明らかに、ある種の

「格差」が存在していると言えます。

 

※関連記事です。

「健康の不平等」を生む社会のありよう、について考える。

 

であるからこそ、

多少無理をしてでも

疲れ潜む重度な病気の兆候を

少しでも早く見つけて

もらって欲しい。

 

健康診断という

サービスを利用して

見つけてもらって欲しい。

 

治療が遅れて

平穏で、活力に満ちた

かけがえの無い人生を

著しく損なった人たちを

数多く診療している

わたしの

切なる願いでもあります。

 

確かに

お年寄りの方が

時に勧められる

ガン検診などは

たとえガンが発見されても

年齢や体力、

合併症などを

考慮して

精密検査や手術、抗がん剤などを

見合わせる場合も

あり得ます。

 

 2016 Apr 15;93(8):659-67.

Cancer Screening in Older Patients.

 

※クリックで外部サイトへリンクします。

こちらの論文では、

高齢者においては、

各自の価値観、余命などを考慮して

ガンの有無に関する全身検査を

受ける必要があると述べています。

 

 

健康診断での

病気の早期発見に

あまり意味がない

という批判は

こうした、がん検診

向けられたものとしては

ある程度の妥当性があるとは

思いますが。。。

今回、

こちらで紹介した

中年男性のエピソードでは

決して当てはまりません。

 

 2019 Nov 1;2(11):e1916285. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2019.16285.

Trends in Diabetic Retinopathy, Visual Acuity, and Treatment Outcomes for Patients Living With Diabetes in a Fundus Photograph-Based Diabetic Retinopathy ScreeningProgram in Bangladesh.

 

※クリックで外部サイトへリンクします。

 

上記は

一流の医学雑誌である

JAMAに掲載された報告です。

バングラディッシュでは、

2025年までに、糖尿病人口が

一千万人にまで膨れあがるとの

予測に基づいて、

国家をあげて、

「糖尿病性網膜症」の

健診を徹底し、

糖尿病による

働き盛り世代の

「失明」を予防するべく

目の健康維持と糖尿病ケアに

注力していく方針のようです。

 

素晴らしい事ですね!

 

治療できる病気を

早めに見つけ出す。

見つけた病気の

進行を遅らせるために

食生活を変えるなどの

健康増進の行動変容を促す。

これらは、

非常に意義があると

わたしは、考えています。

 

※関連記事です。

現役医師が ”超一流の食事術”の著者から、直接学んで実践してみた!

 

 

「健康診断」とは

そういう使い方、

付き合い方も

あるわけです。

 



 

以上、三回に渡って

熱く語ってまいりましたが

いかがでしたでしょうか。

 

「健康診断」は受けなくてもよい!との

極端な主張に惑わされずに、

冷静になって、

まずはご自身の体調を省みて、

「健康診断」

上手に活用して頂きたい。

そのように思っています。

 

お読み頂き、ありがとうございました!

 

※以下、合わせてどうぞ。

「健康診断」、なんとなく受けていませんか?

 

「健康診断」の基準値をどう解釈するの?

 

 

 

 

 

 


石川英昭(いしかわひであき)

管理者・石川 英昭


現役医師、医学博士。二児の父。徳川幕府・直参旗本石川家末裔。
ワクワクする毎日を送る事が、健康寿命に効く!との信念からマインドセット、食事、生活スタイルについて、分かりやすい情報発信を心がけています。

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