結局、睡眠時間はどのぐらいがよいのか??

今回は 睡眠に関する やや長めの(お読み頂くのに5分程度はかかる)記事です。

退屈しないように頑張って書いたつもりですが、あるいは

眠れない方には、眠気を誘発する可能性がもあるかも笑です。

 

みなさん、日々のお勤め、お疲れ様でございます。  

毎晩、よく眠れていますでしょうか? 

 特に睡眠に関して困っていない方もいらっしゃれば、 

 なかなか寝付けない(入眠不良)、寝ても途中で起きてしまう(中途覚醒) 

 などに悩まされている方も、結構いらっしゃるのではないか?

そのように思う次第です。

 言うまでもなく、 

 「睡眠」は、

心身の疲れを回復し、明日への活力を取り戻すために、 

 不可欠な営みです。 

 昨今、 

 「睡眠負債」という用語が紹介され 

 「睡眠不足」が解消されず、むしろ蓄積されて、「負債」となり、 

 健康にも重大な悪影響がある、という指摘さえあります。

 健康寿命増進!を掲げる私としても、この件については腰を据えて精査し、 

 情報発信しなくては、という使命感もあり、 

 今回、「睡眠」を真正面から取り上げる事にした次第です。 

 

何時間眠ればよいの?

睡眠薬を使ってでも、熟睡した方がいいの?

いつも、眠れない、で悩んでいる。。。

 

これらについて、考察してみました。

眠たい方、眠れなくて、ネットサーフィンしている方、、、いずれも笑

是非、お付き合い下さいませ。

 

 




実は、まだあまりよく分かっていない、睡眠という現象。

 

ごく当たり前の生理現象であり、人間の三大欲求のひとつである 

 「睡眠」。 

 書店行くと、実に数多くの「睡眠」関連の本が陳列されており、 いかに、世間の人々が 

 「よい眠り」 、もしくは「寝付きが悪い、眠れない」

などについて関心を持っているかの証左であると考えられます。 

私自身は、幸い、「睡眠」には困っていませんが、

以前から、人はなぜ眠るんだろう?という問いには、興味を持っていました。

これについて。

出典を忘れてしまいましたが、人類の進化の過程から、「睡眠」について検討した本を

読んだ記憶があり、面白かったと感じた箇所についてお伝えしたいです。

まだ、類人猿から、人類に進化していく過程において。

人は、肉食野生生物からの、捕食の対象であり、

常に周囲の安全に最新の注意を払う必要があったと考えられています。

実際、そうした旧石器時代の人骨には、サーベルタイガー(絶滅した虎系のほ乳類)

の歯形が深く刻まれた物が、数多く見つかっているそうです。

そういう状況であれば、24時間覚醒していた方が、安全であり

ヒトという種の保存には有利であったはずです。

しかし、我々の祖先はあえて、危険を冒してまで、全く無防備となる

「睡眠」を選んだ。そういう観点から、睡眠を考える必要がある

というような事が書かれていました。

また、周囲の安全を確認するため、草食系野生動物の側で

就寝するようにして、彼らの寝息が聞こえていたら、安全、と

判断していた可能性があるとの推論も書かれていました。

そうした名残で、完全な無音ではなく、うるさくない程度の寝息は

むしろ睡眠導入になり得る、とも述べられていました。

では、現代人において、睡眠が持つ意味はどのように変化したのか?

睡眠の質、睡眠時間、について、なにか科学的な根拠はあるのだろうか?

まずは、この点から考えていきましょう。

 

 今回、やや過激なタイトルが目を引く、 

「睡眠の常識はウソだらけ」 

社団法人日本ショートスリーパー育成協会代表理事、堀 大輔氏著。

睡眠の常識はウソだらけ

睡眠の常識はウソだらけ

  • 作者:堀大輔
  • 出版社:フォレスト出版
  • 発売日: 2019年01月09日

1日平均45分以下睡眠のショートスリーパーが、
拡大再生産されつづける睡眠俗流論と、睡眠の常識へ反論!

※本書の紹介文より引用です。

ならびに、

 スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣 (PHP新書) 新書 –  

スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣

スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣

  • 作者:西野 精治
  • 出版社:PHP研究所
  • 発売日: 2019年01月17日

最高のコンディション、ダイエット、アンチエイジング、
病気予防、ボケ防止、眠育、睡眠薬との賢いつきあい方……
日本人が知らない「理想の眠り」への決定版! 

※本書の紹介文より引用です。

を参照しながら、考察を試みました。

ショートスリープで良い!、という立場と、

熟睡の習慣!、という立場は、一見相容れない対照的な考え方のように見受けられ、

さて、どちらがより確からしいの?と、

とても面白く感じました。

どちらか、だけを信用し盲目的に受け入れるのではなく、

双方の主張を参考に、比較しながら物事を考える。

ひとつのテーマで脳内ディベート、思考訓練するのも、読書の醍醐味のひとつと言えます。

最初に結論を言ってしまうと。

これだけ医学が進歩しているにも関わらず、睡眠に関しては、どうやら

「よく分かっていない」

という事のようです。。。

よって、適正な睡眠時間について、回答はできないと言うことになります。。。

(期待させてすいません)

しかし、だからこそ、睡眠に関してたくさんの本が出版されているのでしょうね。

 

この状況を、もう少し説明するにあたり、ひとつの補助線として、

脳内のリンパ系システム(グリンパティックシステム、glymphatic system)なる

メカニズムについて簡単にふれておきます。

これは、脳内の老廃物をリンパ液に排出する、洗い流す一連の構造と機能を指す

専門用語で、睡眠中に非常に活発に働いている事が知られています。

睡眠の目的のひとつが、

脳の機能を休め、修復するという点にある事は事実と言えますので、

このシステムが効率よく作動するためにも、

「睡眠」が必要になるはずです。

では、このシステムのみに注目した場合、睡眠時間が長ければ、

より活性化するのか? 短時間でもよいのか?

そもそも、「熟睡」をどのように定義するのか?

これが、争点になってくると言えます。

もし、短時間でも上記のシステムが正しく機能するならば、ショートスリーパーの立場の信憑性を

より強固なものにする有力な証拠になり得ます。

6-7時間ぐらい、あるいはそれ以上、という事になれば、

ある程度の時間持続する熟睡こそが、望ましいという可能性が浮上します。

確かに、短い時間うとうと、するだけでも、とてもすっきり、よい気持ちであったという

体感は、誰しもあるかと思います。

従ってショートスリープであっても、

熟睡、が得られている可能性すらある訳ですね。

 

※仮眠、も立派な睡眠時間。

 

そして、この点については、現在決定的な医学的エビデンス、は

確立しておらず(つまりはよく分かっていない

専門家たちの研究のテーマであるようです。

 

そして、ショートスリーパーの著者である堀氏は、

長時間の睡眠は、認知力の低下につながる。

免疫力を低下させる。

睡眠薬を使って、無理に睡眠時間を確保しようとする事は、むしろ有害である。

という論調です。

ここで、この仮説を裏付ける、有力な臨床研究をひとつご紹介しておきます。

これは、福岡県久山町の「久山町研究」からの貴重な報告になります。

久山町研究は、

「Hisayama study」として、その研究手法、研究の質として、

世界中でとても高い評価を得ており、医者であれば、

だれでも一度は聞いた事がある研究活動で、実に50年!を超える歴史があります。

 

http://www.town.hisayama.fukuoka.jp/50kenkou/

※久山町のホーム・ページへリンクします

 

そんな研究機関が発表した以下の内容は、非常に示唆に富むものであると考えてよいでしょう。

それは日本人の高齢者を対象にした研究報告です。

睡眠時間5時間未満もしくは10時間以上」「睡眠薬の使用」が、

認知症や死亡の危険因子である事が示唆されたそうです。

九州大学の小原 知之氏らが久山町研究での調査結果を

Journal of the American Geriatrics Society誌にて発表して、話題となったそうです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Association+Between+Daily+Sleep+Duration+and+Risk+of+Dementia+and+Mortality+in+a+Japanese+Community.

 

※原著論文の案内サイトpubmedへリンクします。

 

「睡眠薬」という単語が出てきましたね。

次章では、

「よりよい睡眠」や、「睡眠の質をあげる」、「睡眠負債を解消する」

というメッセージが

もたらす弊害について、考察を進めます。

 


「眠れない。。。」は、お金になる。
健康寿命に悪影響な、睡眠薬への依存、睡眠グッズの煽動にもご用心。

 

さきの久山町研究では、更に踏み込んで以下の情報を提供してくれています。

 

睡眠薬の使用が認知症や死亡リスクに及ぼす影響について調べた結果として

睡眠薬を使用している参加者は、睡眠薬を使用しない

1日睡眠時間5.0~6.9時間の参加者に比べ、(統計解析を用いて)

認知症リスクが1.66倍!、死亡リスクは1.83倍!!とのデータが得られたそうです。

 

私も、日々の診療において、

「眠れないから、睡眠薬を下さい」

という要望が、実に多い事が気になっています。。。

今回、ご紹介している二冊の本でも、睡眠薬への依存については

共通の立場で、警鐘を鳴らしています。

「しっかり眠らなければ健康に悪い」

「睡眠の質をよくしましょう」

これらを、誰が、どのような立場で発信しているのか?に注目するように、

とのアドバイスは、是非参考にするとよいかと思います。

睡眠薬の販売を拡大したい、製薬系企業や薬局、

よい眠りを提供します、という謳い文句で睡眠関連用品、寝具などを

販売したい、企業などなど。

これらは、一般的に

「ポジション・トーク」と呼ばれ、自分の立場、立ち位置に基づいて

自分の利益を誘導する手法とされています。

今や、

「不眠」

は一大ビジネスの様相を呈している、私もこれらの本を読み、

初めてそういう視点を得る事が出来ました。

医学的な見地から言えば、

特にご高齢の方が、安定剤や睡眠剤を大量に服用する事で、

日中も、ぼーっとしている、という状況があり、非常に危険といえます。

そういう生活では、歩行時にふらついて、転倒し、骨折。。。

そのまま寝たきりになる経過すらありえます。

同時に、周囲への注意が散漫になり、他人とコミュニケーションを

とりずらくなり、発言し行動する機会も損なわれるため、結果として

”認知力が低下する”、という悪循環に陥ります。

研究の結果は、このように解釈してよいと考えます。

健康維持のための、「睡眠」であるはずです。

「睡眠時間の確保」を目的とした、睡眠薬の安易な服用は慎む必要がありますし、

そういう処方をする、医師にも自戒を促したいですね。

 

 


今一度、生活リズムを見つめ直す。よい眠りを実現する、マインド・セット。

 

そもそも、我々の生活において、

「睡眠」だけを切り離して考える事自体に無理があると言えます。

人間の身体には、生来、体内時計とも呼ばれる機構が備わっており、

体内で合成されるホルモンと連動して、睡眠と覚醒のリズムが整えられています。

特に、脳内の松果体という器官で合成される

メラトニン

は、朝に日光の光を浴びて、15-16時間後に分泌量が最大となり、

睡眠を誘発する作用がある事が知られています。

では、どうやって、自然な形でメラトニンが、たくさん分泌される

身体のコンディショニングをすれば良いのでしょうか?

これには、逆の考え方、

なにがメラトニン分泌を阻害するのか?という事から考えるとよいです。

代表的なものとして、

PCやスマート・フォンなどのブルーライト

(点滅する光刺激)。

興奮、緊張、イライラ状態(交感神経が優位な状態)。

過去の不愉快な情動記憶(いやな事を思い出すなど)、

眠れない事を気にしすぎるという精神的ストレス。

とされています。

また、日中あまり外に出ない生活を送っている場合も、身体が

昼夜のリズムを感知しずらくなるため、

メラトニン分泌異常につながる可能性が高いと思われます。

私の診察室でも、

「眠れない」というお年寄りには

家で、日中テレビなどを、ぼーっとみて。ウトウトしながら過ごし。

誰とも会話をする事なく、夜を迎えている、という生活パターンの方が

見受けられます。

また働きざかりの世代ですと、付き合いで遅くまで

飲酒したり、寝る前に 薄暗い部屋でスマホの画面を

凝視したり。こうした習慣に思い当たる方も

いらっしゃるかと思われます。

 

 

※寝る前の、ブルーライトは控えましょう。

 

 

リラックスするためにも 先の記事にも書きました通り

HSP入浴法を実践し ラベンダーのアロマでも準備して

まあ 寝れなくても いいや ぐらいの感じで

ボーっとするのがおススメです。

 

健康寿命に効果的な、入浴方法とは?

 

 

そして 目を閉じて一日で楽しかった事だけを思い浮かべるのも秘訣です。

これについての 医学論文も上げておきます。

こちらでは、眠る際の不快な情報、記憶が脳にどのように作用するか?

血流分布測定等を用いて解析。結果、長期記憶に残りやすい可能性を指摘しています。

 

http://www.afpbb.com/articles/-/3109634

※AFPBB NEWsのサイトへリンクします。

https://www.nature.com/articles/ncomms13375

原著論文へリンクします

 

精神的トラウマ を研究されている学者さんの報告です。

寝る前のイライラは 寝つきを悪くするだけでなく長期記憶化 つまり長い期間覚え込み

事あるごとに

思い出す!!、という困った事態を引き起こしかねない訳ですね。

なんだか 最近不機嫌だな という方は くれぐれも

ご用心下さいませ。

 


まとめ

睡眠時間に、こだわりすぎない。気分よく目覚められる生活リズムを!

睡眠不足を 極端に恐れ 安易に睡眠薬に頼らない。

常にリラックス。楽しい事をイメージして

眠れなくてもいいや と鷹揚に構えるマインド セットこそが、大切!

ではでは。

どうか、よい夢見て下さいね。

おやすみなさいませ!