現役帝大医局員が解説する「白い巨塔」の楽しみ方

医者ドラマの金字塔!「白い巨塔」について、現役帝大医局員が解説します!

 

 

医者を主人公とした

ドラマや、

医療現場を舞台にした

ドラマは、

手を変え品を換え、

いつもどこかで放映されているように

思われます。

 

それだけ世間の関心の高い

ジャンル

なのでしょうね。

 

私個人の独断ですが、

これらの中でも、

故・山崎豊子氏の

「白い巨塔」

 

と、

アメリカのテレビ局作成の

「ER 救急救命室」

 

by カエレバ

 

 

が、完成度として最高峰であると

思っています。

 




 

 

 

 

現在もDVDーBOXや

レンタルで鑑賞できると

思われますが、

1978年度版・白い巨塔(田宮次郎氏主演)

*クリックで外部サイトにリンクします。

は、個性的な登場人物の織りなす

非常に重厚なドラマに

静かな感動を覚えました。

撮影のロケ地が、

私の母校、

東海大学医学部付属病院、というのも

なんだか嬉しいポイントです。

 

 

 

 

さて

今回は、この「白い巨塔」

につきまして。

現役帝大(帝国大学)の医局員かつ、

関連病院の勤務医として

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%9D%E5%9B%BD%E5%A4%A7%E5%AD%A6

*「帝国大学」の用語解説、外部サイトへリンクします。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A2%E9%80%A3%E7%97%85%E9%99%A2

*「関連病院」の用語解説、外部サイトへリンクします。

 

ドラマ内の会話に登場する

「教授選」の解説

を中心に、楽しみ方をお伝えしたいと

思います。

 



 

 

 

 


●教授選(きょうじゅせん)とは?

 

 

*現職教授たちによる、次期教授選出のための「教授選」!

 

ドラマでは、

主人公・財前五郎は、

「浪速(なにわ)大学第一外科・准教授」

という設定になっています。

通常、

医学部を有する大学は、

○○大学付属病院と呼ばれる

総合病院の経営に携わっています。

 

そして、

教授を頂点とする

「医局:いきょく」

と呼ばれる組織に所属する

数多の医師達が、

ここを舞台として、

患者さんに対して「診療」を行い、

最先端の「医学研究」を推進し、

医学部の学生の「教育」に

日々鋭意取り組んでいらっしゃいます。

 

大学の教室として、

どのような医療のあり方を提案していくのか?

どういうテーマの研究に注力するのか?

もちろん、多くのスタッフで

議論するわけですが、

これらの最終決定権はやはり、

「教授」

に存在しています。

 

江戸幕府でいえば、

「将軍様」

ですね。

 

アカデミア(学問の世界)における

ひとつのゴールが、

「教授」

という肩書きである事に、

異論はないかと思われます。

 

*教授のイスを巡る、エリート達の熾烈な戦い!

 

 

 

大学で切磋琢磨されている

とても優秀な

わたしの医師仲間たちの中から

将来の「教授」が誕生する事は

楽しみではありますが。。。

「教授」という栄誉を手に出来るのは、

ひとつの教室で、たった一人だけです。

 

では

「教授」は、どうやって決まるのか?

それは、医学部内での、現教授職による

選挙、つまりは「教授選」という事になります。

 



 

 

従いまして、

政治の世界がそうであるように、

医学部教授の教授選挙も

選挙に勝つための戦略として、

様々な駆け引きが展開されるであろう事が

想像されます。

 

「白い巨塔」

のドラマで言えば、

財前准教授を、後任教授にしたくない

東(あずま)教授は、

彼の対立候補を、

他の大学(東都大学)から

招聘しようと

画策します。

 

そして、その誘いを受ける

東都大学外科教室、船尾教授にも、

当然彼なりの

思惑があるわけです。

自分の一門の医師を

浪速大学に首尾良く「教授」として

送り込める事は、彼自身が

浪速大学第一外科の医局運営にも

影響を及ぼす事が出来る、

という事を意味します。

つまりは、

「勢力拡大」に

つながる、願ってもないチャンスなのです。

 

これは決して、ドラマ内の話に止まらず

現実の世界でも、特に

「帝大医学部の教授ポスト」

というのは、医学アカデミアの住人

(白い巨塔!!の住人)にとっては

輝かしい魅力を放っている金看板である

と考えられます。

 

実際に、

医局内で、順調に出世街道を

歩んでこられた先生が、

いざ「教授選」!となった際に、

他大学からの華々しい業績をもつ

対立候補に敗れて、

大学を追われる身となる。。。

という話は、

わたしの周りでも見聞きしています。

 

どのような選考基準なのか?

とても気になるところですが、

これは選挙権のある「教授会」の

メンバーのみぞ、知るところです。

 



 

 

そして教授選は、

所属する医局員にとっても

一大イベントと言えます笑

教室の上司である

准教授の選挙参謀として

選挙期間を一緒に戦い抜いた結果、

教授就任、と相成ればよいのですが。。。

もし対立候補が

教授に選出された場合、

非常に難しい立場にたたされる運命が

待ち受けています。

 

その新しい教授が、

自分の懐刀として

引き続き活躍して欲しいと

言って下されば医局での

居場所がありますが、

兼ねてから仕えている部下の

医師を招聘してくる場合

(教授は、こうした人事権も有しています)

これは、暗に退職(関連病院への赴任など)

を仄めかしていると、解釈するのが

医局員の暗黙の了解なのです。。。

 

こうした背景を理解する事で、

白い巨塔のドラマにおいて、

財前准教授以下の医局員が、

必死に、一丸となって

財前教授擁立!に

団結する意味が分かっていただけるかと

思われます。

 

彼らは、

財前吾郎・准教授と

一蓮托生なんですね。

選挙戦でよい働きをすれば、

当然自分のポストも

厚遇されるであろう、

との思惑があるわけです。

 

なんともまあ

診療や、研究をしっかりやれよ!

と言いたくなるところでは、ありますよね。

 

というわけで

医学部の教授選

という実に

マニアックで

おおよそ一般の方の生活には

直接的な影響はほぼ皆無と思われる

(平たく言えば、どーてもよい笑)

題材を取り上げて

ここまでリアルに

しかも、未だ色あせず、

(現役帝大医局員の、今日の視点から見ても)

実に面白い人間ドラマとして

昇華させた

故・山崎豊子氏。

この作品を描くにあたり、

徹底的に医学部や大学病院を取材されたと、

どこかで読んだ記憶があります。

作家として、畏るべき執念と才能ですよね。

 

白い巨塔のドラマの

前半は、

この「教授選」

における、人間模様が中心です。

 

1978年度の放映作品では、

教授達が、タバコの煙が

充満する部屋で

教授候補の選考について、

退屈そうに議論する

シーンを見る事が出来ます。

 

 

 

無造作に、

灰皿に積み上げられた

タバコの吸い殻で、

視聴者は、

その時間経過の長さを

体感できるわけですね。

 

今では、建物内では

禁煙、分煙が当たり前で、

こういう見せ方は、

実に昭和的な表現として、

若い方には逆に新鮮に映るのでは

ないでしょうか。

是非、この

1978年度版 白い巨塔

も鑑賞して欲しいなと思います。

*かなりの長時間になるので、全部みるのには気合いと体力が必要です笑!

 


 

 

 

以上、まとめますと

白い巨塔の

「浪速大学教授選」パートは、

権力や名誉欲という魔力に

翻弄される、

大学病院医師・医局員の

悲喜こもごもの

群像劇、として

楽しむのが、オススメです。

主人公の

財前五郎准教授以外にも

腋を固めるクセのある

医者達の立ち振る舞いにも

注目してご覧下さい。

 

 

石川英昭(いしかわひであき)

管理者・石川 英昭


現役医師、医学博士。二児の父。徳川幕府・直参旗本石川家末裔。
ワクワクする毎日を送る事が、健康寿命に効く!との信念からマインドセット、食事、生活スタイルについて、分かりやすい情報発信を心がけています。

 

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