私たちは、いつまで,「元気で運転出来るのか?」
について考えてみる。
ほぼ連日のように,
「高齢者ドライバーによる運転事故」が
報道されていますよね。
いつ
自分や家族の身の回りにも
起きるとも限らない、
こうした不幸な出来事。。。
高齢者の運転する車が,
歩道に突っ込み,通学中の子どもたちを
死傷させる,というような胸の痛む事例もあり
幼い子を持つ親として,
この状況を,とても深刻にとらえています。。。
この話題については、
お年寄りで,
認知機能が落ちてきているから
ブレーキや,アクセルを
踏み間違えて事故を起こすのだろう。。。
そうお考えの方も
いらっしゃると思います。
もちろん、これも一因には
間違いありませんが。
実は,これ以外にも
「運転する」
という行為自体が心身にとって
ストレスとなり,
運転中の急病を引き起こし,
これが原因で起きている交通事故も多い事を
ご存知でしょうか?
高血圧や糖尿病などの
慢性の病気を抱えている患者さんは,
これらの持病が,運転中の事故に繋がる
可能性がある。
今健康に
過ごされている方にも,
運転中に意識すべき
心構えがある.
元気で運転できる期間を
あらわす用語と思われる
「健康長寿と運転」
をテーマに
ご高齢の方や
持病ある方を日々診察する
現役医師として,
あれこれ、考察してみたいと思います 。
なにが「運転の寿命」を決めるのか?
特に,心臓の持病のある方はご用心...
ご高齢でなくても,
高血圧などの持病がある方
実際に,血圧の薬を飲んでいる方は,
「運転する」という事に対しての
心構え,を見直す必要がありそうです 。
*運転中には、血圧が上がる事が知られています。
こちらは 英語論文ですが、
Guidelines and Regulations for Driving in Heart Disease
Theodoros A. Zografos, Demosthenes G. Katritsis Department of Cardiology, Athens Euroclinic, Athens, Greece
*クリックで原著(英文)へリンクします。
タイトルは
「心臓の持病のある方向けの,車の運転に関する指針」
と和訳出来ます。
*クリックで外部へリンクします。
こちらでは、
心筋梗塞のカテーテル治療後,
どのぐらいの日数で運転してよいのか?
ペース・メーカーの留置を受けてからは,どうなのか?
私生活で運転する人と,
運転を職業にしている人
(バスやタクシーの運転手さんなど,でしょうね)
では治療後,運転が許可されるまでの
日数に違いはあるのか?
など,
実に有益な情報が記載されています 。
そして、
病状がより深刻な場合、
「運転を辞めるように」
と明記されています。
特に、職業運転手さんには
厳しい制約が科せられている印象です。
つまりは、
「運転可能な寿命」の宣告
とも受け取れる
指針と言えますね。。。
日本の医療現場で,
医師と患者さんの間で
こうした丁寧なやり取りがなされているか?
と問われるますと。。。
残念ながら
からなずしも, そうではないように
反省させられます。
ご高齢の方は,心不全(しんふぜん)などで
入院するリスクが高く,
またそうした方々も,普段生活する上で
「車の運転が欠かせない」
という場合もあるわけですよね。
交通の便が悪い山間部などで暮らす
お年寄りの日々の暮らしの足として
「車」は欠かせないと考えられます 。
したがって,退院後は
すぐにでも車の「運転」をせざるを得ないのです。
しかし医学的な観点からは
交感神経の緊張を伴う
車の運転は,
血圧や脈拍の上昇をもたらすため,
退院間もない期間は,なるべく避けるのが
望ましいと言えます...
とても難しい問題ですよね...
退院したばかりの
高齢者が,運転中に,再度
心筋梗塞(しんきんこうそく)を
発症し,心臓が停止した
状態となり,その車が事故を
引き起こす。
証明は,時に困難ですが,
こうした事例は
間違いなく存在すると考えられます。
つまり
事故で亡くなった,のではなく
亡くなったから,事故を起こした.
というように理解する事になります。
そして自分自身は、気がついていなくても
例えば高血圧が誘引となる
急性大動脈解離(きゅうせい だいどうみゃくかいり)
なども,運転中に発症するリスクが
高い病気のひとつ,とされています.
http://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvs/vascular/vascular-tr-01.html
*医学用語解説、国立循環器病研究センターのサイトへリンクします。
急性大動脈解離,は
その前兆として,胸や背中に激しい痛みを
感じるとされています。
*背中の痛みは、危険信号です!
また場合によっては
あまりの痛さに,ショック状態となり
意識を失ってしまう場合もある事が
知られています...
Acute Aortic Dissection Occurring “Behind The Wheel”, Report of 11 Cases Takamichi Yoshizaki, MD,1 Naoyuki Kimura, MD, PhD,1 Tomoyasu Hirano, MD,2 Atsushi Yamaguchi, MD, PhD,1 and Hideo Adachi, MD, PhD1
*クリックで原著(英文)へリンクします。
こちらの論文では
運転中の,「急性大動脈解離」の死亡は
運転中突然死の割合として4.1-6.7%程度を
占めていると,報告しています。
喫煙などの習慣があり,
高血圧を指摘されているが
医師の診察,治療を受けていない方で
最近,胸の痛みを感じる事があるような方 。
こうした方で,
なおかつ運転がお仕事そものである
職業ドライバーの方は,
運転寿命のみならず,
健康寿命のために,
是非とも,早めに医療機関を受診して
いただきたいと思います 。
https://www.think-sp.com/2013/11/27/jikozero-kenko1/
*事故に結びつく健康リスクを意識しよう 外部サイトへリンクします。
「健康運転長寿」ために出来ることは?
では, 私達が,
よりよい 「運転寿命」のために,
なにを 気をつけるべきなのか?
とても参考になる一冊とともに,
これについてお伝えしておきます 。
さきに述べました通り
運転中には,
人の心身には,大きなストレスが
加わります 。
信号や歩行者への配慮
スピードへの配慮
車間距離への配慮
夜間や悪天候の際の視界確保への配慮...
などなど。
これらに対処する事は、
交感神経を興奮させ
その結果、心拍数や血圧が上昇します。
よって,こうした反応を相殺すべく
リラックスを司る
「副交感神経」を活性化させる方向に
仕向ける必要があると言えます。
残念ながら,
交感,副交感神経は
自律神経と呼ばれ
自分の意識で制御出来ないため,
少しでもコントロール出来る部分に,
働きかける事になるわけです。
具体的には,
呼吸を整えたり,
好きな音楽を聞いたり,
香りなどで、落ち着きを取り戻したり。
という事になると思われます 。
ご紹介の本には,
#割り込まれてもイライラしない
#道に迷ってもイライラしない
などのアドバイスも書かれていました。
常に心に余裕をもって、運転に臨みたいですね。
*運転中の「イライラ」は厳禁です!!
●イライラ、については以下の記事もどうぞ。
●普段から、イライラしているかも笑、という方には、こちらもご参考下さい。
最後に、もうひとつ。
高齢者ドライバー事故、
で必ず話題となる、
「運転免許の返納」ですが。
趣味の活動に、
どうしても車が必要な方。
仲間と集まるために、
車が必要な方。
そういう状況の御高齢者も
いらっしゃる訳で。
たとえ家族であっても、
「そろそろ免許を返したら?」
と伝える事が、
時に、彼らの
「生き甲斐」
を奪う事にもなる、との指摘は
もっともであると感じました。
*シニアの方々の「健康運転長寿」のため、社会全体で考えましょう。
自動運転技術には
期待したいところですが。
頻繁に「高齢者運転手の事故」が
取り沙汰される背景には、
我が国が
「高齢化社会」
である事が深く関係していると
考えられます。
この問題の解決に向けて、
各分野で「叡智を集結させて」
取り組む必要がある。
私も現役医師として、
幼い子と
年老いた両親を持つ身として。。。
今回の記事を通して、
「健康長寿」と「自動車運転」
の問題に関して
みなさんにも考えて欲しい。
そう願っております。
個人的には、
50歳をすぎたあたりから、
「健康長寿と車の運転」について
ぼちぼち考え始めても
決して早すぎる事はないのでは?
と感じております。
お読みいただいき、ありがとうございました。
☆参考サイト
https://www.ncgg.go.jp/cgss/department/cre/gold/index.html
*国立長寿健康センター 運転寿命延伸プロジェクト・コンソーシアムのサイトへリンクします。
現役医師、医学博士。二児の父。徳川幕府・直参旗本石川家末裔。
ワクワクする毎日を送る事が、健康寿命に効く!との信念からマインドセット、食事、生活スタイルについて、分かりやすい情報発信を心がけています。